第1章 始まりの日
「あの…あの…すいません…」
そう控えめに俺に投げかけられる声に
「ふが…?」
なんて情けない声を出しながら
ゆっくりと目を開けると
すごく申し訳なさそうに
俺を見つめる顔がそこにあって
「そのスマホ私ので…」
そう言うと
俺の右手握りしめたままのスマホを
指差す…
「あぁ…さっきの電話の…?」
そう小さくあくびをしながら俺が答えると
「そうです!!
さっきそのスマホに電話したの私です。
置いておいてくれてもよかったのに…
なんかすいません。」
なんて嬉しそうに笑って
スマホを受け取るべく
俺の目の前に手を伸ばす…
俺にはなぜかその手が
従順に目の前に差し出された
忠犬ハチ公のお手のように思えて
ニョキニョキと
いたずら心が芽生えて
「はい…どうぞ…笑?」
そう言って
座っていたベンチから立ち上がり
頭上高く握りしめたままの
スマホを持ち上げると
「はい…?
あの…え…うそでしょ…?」
なんて顔から笑顔を消したかと思うと
彼女は必死な形相で
ぴょんぴょんと俺の目の前で
何度も何度も飛び跳ねた…笑