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暁の契りと桃色の在り処 外伝 【イケメン戦国】

第10章 天女の歌声 後編


「ただいま、戻りました。」

『あぁ。』

『具合はどうだ? 疲れただろ? …反物は?』

「具合は悪くないよ、大丈夫。反物は買わなかった。」

『そうか。さ、入ろう。』

秀吉があさひの背中を押す。
すると、光秀が、ぽんとあさひの頭を撫でた。
あさひは、光秀の背中を見つめ、その後振り返り咲を見る。
目があった咲は、微笑むと頷いた。


「…信長様、お話があります。」

その小さな声に、光秀は微笑み、秀吉は驚く。
信長は、ふっと小さく笑うとあさひの手を引き城に入っていった。





『なっ、反物屋と茶屋は嘘で、佐助と会ってた?
あさひ。なんだ、それ?』

広間には上座に座る信長と、その正面に座るあさひ。それを取り囲むように武将達が座っていた。
咲が襖近くに、弥七と吉之助は廊下にてあさひを見守っている。

「…ごめんなさい。」

『はぁ、…あいつは敵意もないし、あんたの護衛もしてたやつだけど…二人でなにしてたのさ。』

『信長様に黙って、逢瀬か?』

『ま、政宗!何言ってるんだ!』

『…して、嘘までついて何してたんだ?』

「…それは、。」

『言えないことか?』

信長の鋭い視線に、
あさひは握っていた手に力が入る。

「歌を…」

『…うた?』

「故郷の時代の歌を、歌っていました。」

『『『…。』』』

『ぷっ、くくっ!』

光秀が笑い出す。

『…あさひの歌声なら俺だって聞きてぇ。黙っていくなよ。』

『えぇ、以前聞きましたがあさひ様は歌もお上手でしたよね。私も聞きたいです。』

『…歌を歌うくらい城でやればいいだろう?』

「…思い切り歌いたかったから。」

『はぁ、まぁね。からかわれたりなんだりするよりは、いっそ故郷の時代の歌を知る佐助だけがいい、とか思ったんでしょ。』

「…。うん。」

『…でもな、嘘は駄目だ。城下だって何があるかわからないし、危ないんだぞ?』

「うん、ごめんなさい。」

『次はいつ行くんだ?』

『五日後、だそうですよ。』

「みっ、光秀さん!」

『行く時はきちんと言え。【ついては行かない】から。』

「…信長様!いいんですか?」

『佐助が一緒なら心配はあるまい。』

「はい、良かった。思い切り好きなだけ歌ったら、楽しかったんです。」



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