第17章 Identity
「バカ野郎。」
目の前の青年が、とても、すごく不機嫌で、どうしたらいいのか、私には分からなかった。
楓「・・・どう、したの?快斗。」
快斗「体調、治ってねぇのに学校行くな。」
不貞腐れたような表情で、ジーッとこちらを見る快斗に思わずビクッと肩を揺らす。
楓「・・・でも、」
快斗「でもじゃねぇ。ただでさえ無茶したらいけないんだから、体調崩した時くらい寝てろ。」
楓「・・・ぇ。」
茫然。あってはならないのに、予想外の言葉に、言葉を失った。
快斗「・・・わりぃ。勝手に調べた。」
楓「・・・調べれた、の?本当に?」
快斗「・・・勝手に調べたことに驚かねぇ辺り、流石というか、なんというか。」
楓「どう、やって・・・。」
快斗「月下の奇術師様をなめるなよ?」
そう言って、ニヒルに笑っているのに、どことなく顔が歪んでいる。
あぁ、そうか。
楓「やっぱり、そうなのね。」
快斗「・・・知ってたのか。」
楓「なんとなく。・・・それで、快斗はどうやって調べたの?」
快斗「澪の血。」
楓「・・・そっか。」
快斗「・・・聞かないのか?」
楓「んー、まぁ、いいかなって。」
どこで私の血をゲットしたとか、色々聞きたかったけれど、答えてもらっても、きっと今後の私には参考にならないだろうと判断して聞かないことにした。
快斗「で、無茶苦茶してるお嬢さん?今日はここで寝てけ。明日も学校休め。」
楓「でも、快斗は学校があるでしょう?」
快斗「俺は賢いから行かなくたって問題ねぇの。人の心配すんな。」
わしゃわしゃと頭を撫でられる。
快斗「まだ、早いんだろ。」
楓「・・・ありがとう。」
どこまで、見通されているのだろう。
目尻が、ジワジワと滲む。
快斗「生き急ぐと、出来ることも出来なくなっちまうぞ。お前には、俺がいるんだから、無茶すんな。」
楓「・・・う、ん。」
下を向いた。
見て見ぬふりをしてくれる彼が、ちょっぴり大きくみえた。