第8章 雨宿りはお好き?
前を向けば、正面に先生の顔。
玄弥に似た顔立ちで傷だらけの彼は、私の瞳を捉えて離さなかった。
彼の黒い瞳の中には、ハッキリと私が反射されていた。
一つの机を二人で囲んでいた為、逃げ場はどこにも無い。
真剣な彼の眼差しからも、逃げられる気がしない。
「アイツらとどのくらい進んでんのか知らねェけどよ。……俺は、……絶対に渡したくねェ。」
「え……??」
カタン、と私の持っていたシャーペンが机の上に落ちた。
西日射す教室で、私たちの影が重なる。
(あ、不死川さんの、、)
ふわっと先生の髪が私の頬を掠めた。
ちゅ、と可愛らしいリップ音を立てて離れた唇と唇
驚いた儘の私とふっと微笑んだ先生の瞳は、未だに見つめ合うままだった。