第7章 文化祭という名の…
征ちゃんに視線を合わされ、一瞬怯む茉実たちだったが、すぐに挑戦的な視線を征ちゃんに向けた。そしてボールが宙を舞い、今ティップオフ!
2メートルを超えるあっ君に叶うはずも無く、ボールは帝光がキープ。PGである征ちゃんにボールが回る。マッチアップは優希に任せた。精神的に一番落ち着いている優希。征ちゃんを相手にするのは重荷すぎるだろうが、快く引き受けてくれた。それがチームのためならば、と。
「ハッ、やっぱり俺の相手は朱音か。勝負だ、絶対ぇ負けねー」
『あたしだって負けないよ。それにあたしが目指してるのはチームの勝利。それと、一つ忠告しておく。大ちゃんには第1Q、ボールには指一本触れさせないから』
「…は?」
あたしはそれ以上何も言わなかった。そして征ちゃんが動くのを待つ。チラリと周りを見ると、きちんと皆、マークについていた。そのせいか、征ちゃんもじっと様子を伺う。そのまま時間が流れる。もうすぐ24秒、動くなら今だ。
バッシュのスキール音が激しくなったと思えば、征ちゃんが優希を抜いた。だけど優希も負けじと後ろから着いて行く。征ちゃんが動いたのと同時に帝光の動きが早くなってマークが振り切られてしまった。そして真ちゃんにボールが渡ると、3Pのラインで踏み込み、綺麗な弧を描いてボールはリングへと吸い込まれるように入った。
生徒「…す、すげぇぇぇ!」
生徒「何あのシュート!?凄く綺麗!」
今まで静かだったギャラリーから歓声が聞こえた。
『っ!?凜子!ボーっとしないで!リスタート!』
凜子「!は、はい!」
時間はどんどん過ぎていく。それに伴いどんどん離されていく点差。鈴城は未だ未得点。決して彼らの実力を甘く見ていたわけでも、彼女らの力を過大評価していたわけでもない。やっぱり皆、動きが硬いのだ。
「どうした、朱音。こんなモノだったのか」
征ちゃんからの挑発的な眼。それに乗るようで気に食わないが、これ以上点差が広がるとやっかいになる。あたしは大ちゃんから少し距離を置き、征ちゃんの傍に寄った。そして征ちゃんから涼君にパスが投げられたところで、涼君のマークに着いていた凜子に大ちゃんに着くように指示を出した。加速することによりぎりぎりでスティールに成功する。そしてそのままゴールに向かった。