第7章 文化祭という名の…
『とにかく相手は強い。今までで一番。けど皆が実力を出し切れば勝てないこともない。絶対に雰囲気だけには流されないで。それに試合中に嫌でも分かることがある。それは体格差。けど億することはない。皆の技量なら大丈夫。それから味方であるあたしたちをちゃんと見ること。そして信じること。これらさえ意識しておけば、絶対大丈夫だから』
「「「「「「はい!」」」」」
あたしたちの声が体育館に響く。すると今までざわついていたギャラリーが静まり返る。
「…だ。分かったな」
「「「「「「うす!」」」」」
征ちゃんの声が最後だけ聞こえた。来ていたTシャツを脱ぐ。あたしの背中には皆の期待がこもった、4という数字。大丈夫、と念じて高い所で結った髪をもう一度きつく締める。そして審判の笛により、鈴城と帝光の選手がコートに集まった。
鈴城のスタメンは茉実、優希、凜子、捺美、そしてあたし。帝光は征ちゃん、真ちゃん、大ちゃん、あっ君、涼君だった。茉実たちを見ると、その表情はいつもの試合で見せる、真剣そのものだ。そしてあたしは視線を感じて眼の前の人たちを見る。
「こんな形で形式試合が出来るなんざ思わなかったぜ。今日こそ俺が勝つ」
『あたしもだよ、大ちゃん。すっごくわくわくしてる』
「相手が女子だろうと朱音だろうと関係無いのだよ。俺は俺のバスケをする」
『うん。真ちゃんは真ちゃんの、あたしはあたしのバスケをしよう』
「いつもは見てるだけだったッスけど、俺だって朱音っちと勝負してみたかったッス。だから負けねーッスよ」
『涼君の成長の速さには本当に驚いてる。だけど、あたしも負けないよ」
「本当は朱音ちんと戦うなんて嫌だけどさ~、今日だけは本気、出しちゃうからね~」
『あっ君の本気、見てみたいけど、あたしも出しちゃうからね、本気』
「朱音。君との初めての勝負がバスケで良かった。だが悪いが僕たちが勝たせてもらうよ」
『征ちゃんとこういう形で勝負できるとはね。勝のはあたしたちだよ』
キセキとあたしの間には火花が散る。だけど
『あたしたちを舐めない方がいいよ』
「舐めてなどいない。僕たちは認めているからこそ、こうしてここに立っている。もちろん、彼女たちのこともね」