第7章 文化祭という名の…
キセキの分厚い壁を抜け出すと、お兄ちゃんの前に出た。
『もう!皆少しはあたしの話も聞いてよ!それにお兄ちゃんも、そう簡単に喧嘩買わないの!』
あたしが大声を出すと、すいませんと皆の声が揃った。
『さ、和解も済んだなら皆解散!皆はクラスの仕事があるんでしょ?お兄ちゃんたちも、茉実とか藍のクラスにでも行って来たら?』
兄「分かったって。だから怒んな?後で何か奢ってやるから。で、何時からだっけ?例の試合は」
お兄ちゃんに尋ねられ、1時からだよと答える。そしてその瞬間、何の話をしているのか分からなかったキセキの皆の目付きが変わった。午後1時。それは鈴城と帝光の親善試合の時間だった。キセキの皆の変化をお兄ちゃんが見逃すわけもない。
兄「へぇ、お前らが例のキセキの世代って奴らか。なるほど、改めて見ると確かに大したもんだな。だけど、朱音はもっと凄いぜ」
お母さんとお父さん、それに茉実の両親も後で見に来るとだけ伝え、お兄ちゃんは健君を連れて茉実のクラスに向かった。残されたあたしとキセキの皆の中に火花が散る。
「今度は絶対に負けねぇからな!」
「今日の運勢は蟹座の俺のほうが乙女座より運が良いのだよ」
「なんか~、朱音ちんには負けたくないな~」
「今日だけは敵ッスよ!絶対に負けないッス!」
「朱音さんとの試合、楽しみですが絶対に負けられません」
「ということだ。悪いが朱音には敗北を味わってもらうよ」
挑戦的な皆の言葉を胸にしまい、あたしは大きく息を吸った。
『あたしだって絶対に負けないから』
1組の教室では、あたしたちを筆頭に、周りの皆も白熱した空気に興奮していた。