第7章 文化祭という名の…
「それでは最後に第1回ミスター帝城を発表する。ミスター帝城は…」
ここで征ちゃんは最後の封筒を開ける。中に入っていた紙を見た途端、心底嫌そうな顔をした。あの征ちゃんが顔を崩すなんて、と思った同時にまさかとも思う。
「帝光中2年2組…黄瀬涼太君」
「やったー!ま、もちろん当たり前だと思ってたッスけど!ありがとう、赤司っち!」
やっぱり涼君だったと思うと、笑顔の涼君と目が合う。そして恥ずかしそうに手を振ってきた。何故。いつもはすんごい笑顔なのに。それを見て征ちゃんはプリントを渡すみたいに賞状を渡し、バスケットボールをパスするみたいに商品である大きな包みを渡した。
「ひどいッスよ!俺、ちゃんと実力で優勝したのに!」
「時間がもったいないな。朱音、女子の方を発表してくれ」
苗字呼びということも忘れて朱音に言ってきた征ちゃん。少し涼君が可愛そうかなとも思ったけど、観客の子たちとの、黄瀬くーん!おめでとー///ありがとうッス、皆のおかげッス!と言う茶番を見て、あたしも次へ進むことに決めた。
『じゃあ第1回ミス帝城を発表します!…すいません、少々お待ちくださーい!赤司君、黄瀬君、戻ってくるまでこの場を繋いでおいてくださいね!』
あたしは舞台袖にニコニコと笑って立っている実行委員の二人に詰め寄った。もちろん皆には聞こえないように小さな声で。
『ちょっと!これどういうつもり!?こんなの許されるわけないでしょ!』
梶田「いいいいや!でもこれが投票結果なので…」
『根本的に間違ってるでしょ!』
と言ってから気付いた。別にあたしが発表するんだから、このことは伏せておけばいいんだ、と。あたしは会場に戻った。
『お騒がせしました!それではミス帝城を…』
「何だったんだ?」
『何でもないですよ!それではミス…』
「僕に隠し事が出来るとでも?」
やめて征ちゃんんんん!そんな何でもお見通しだっていう眼で見ないで!と願っても通じるわけもなく。だって相手はあの征ちゃんなんだもん。ジリジリと壁際に追いやられていく。あたしはこの封筒だけは取られまいと反射的にキュッと封筒を握ってしまった。