第7章 文化祭という名の…
朱音母「茉実ちゃん!来てくれたのね!あの子も喜ぶわ!」
朱音父「茉実ちゃん、来てくれて本当にありがとう。朱音の姿をしっかり見ておくれ」
智也兄「ったく、来ないかと思ったぜ。喧嘩することも良いけどよ、あんま心配かけんなよ?」
智也兄に頭をわしゃわしゃと撫でられる。
朱音母「智也、優しくね。茉実ちゃん、これが朱音にとって小学校で最後の試合なの。だからちゃんと見てあげてね」
朱音のお母さんに優しく言われ、私は随分と小さく見える朱音の姿を、目を離すまいと必死に見続けた。まだ試合は始まっていないようで、朱音はボールをゴールに入れる練習をしていた。そしてふっとこちらをみた。私が小さく手を振ると、朱音は一瞬泣きそうな顔をして、すぐに嬉しそうに手を振ってくれた。体育館に大きな笛の音が鳴り響くとボールが高く放り投げられた。
体育館に大きな歓声が鳴り響く。それは朱音がボールを輪っかの中に入れると更に大きくなる。私にはルールなんて全く分からないけど、朱音が凄く強いことは分かった。朱音がボールを投げると、吸い込まれるように輪っかの中にボールが収まる。朱音が同じ色の服を着た人からボールをもらえば、ほとんど全部って言うほど決まっていた。
茉実「智也兄、朱音ばっかり点を取ってていいの?相手の人に目を付けられるんじゃないの?」
智也兄「いいとこに目を付けたな。朱音がやっていることはPFといってスコアラー、つまり点取り屋なんだ。もちろん相手のマークっていう邪魔をする行為が増えるけどな、それをぐんぐん抜いてゴールを決める。それが朱音の仕事だ」
智也兄は私に丁寧に教えてくれた。