第7章 文化祭という名の…
気が付けば叫んでいた。私の声が聞こえて、朱音が私の家をすぐに見て私に気付いてくれて、笑顔で手を振ってくれる。
『今から皆であたしの家でご飯食べて遊ぶんだ!茉実も一緒に遊ぼう!』
いつもは嬉しいはずの朱音からのお誘いも、今だけは聞きたくなかった。
茉実「…皆って誰?」
『え?皆って言うのはね、ここのいる人たちだよ!』
茉実「私その人たち知らないもん!」
『大丈夫!皆私の友達だよ!同じバスケの…』
茉実「やだ!聞きたくない!」
『茉実!?』
私は朱音の声を聞かず、ベランダから離れ、部屋に閉じこもった。そして泣いた。いっぱい泣いた。どうして、朱音には私がいるのに、と。まだ子供だった私は、朱音が他の人に取られてしまうと思い、また泣いた。それから何回も朱音は私に会いに来てくれた。だけど私はそれに応えなかった。私たちが話さなくなってから、もう1週間が過ぎようとしていた。謝ろうと思えば思うほど、私の足は重くなった。本当は早く仲直りをして、元通りに仲良くなりたかった。だけど出来なかったのはきっと私の意地が原因。私から朱音をいとも簡単に連れ去ってしまったバスケを、私は恨んだのだ。
『茉実』
金曜日のこの日、いつものように帰る準備をしていると、最近では聞くことも少なくなった大好きな朱音の声が私の名前を呼んだ。とても真剣な声に振り返りそうになるが、私はグッと耐えた。だけど朱音は続ける。
『明日、バスケの試合があるんだ。東京の一番を決める小学生の大会。明日が決勝戦なんだ。茉実に見に来てほしい』
朱音の声が私の中に入る。バスケの試合を?何で私から朱音を奪ったバスケを見に行かなきゃいけないの?
『お願い、茉実に見てほしいの。あたしが今まで練習をしてきた成果を』
茉実「…私は行かないよ」
それだけ言い切ると、私は朱音の元から走って逃げた。