第6章 合宿
「まじッスか!?朱音っち彼氏いないんスか!?」
『もう、涼君しつこいってば。いないもんはいないの』
「じゃあ今まで付き合ったことは?朱音ならあるだろ」
『…大ちゃん、あたしのこと馬鹿にしてる?どうせ年齢=彼氏いない歴だよ』
「けれど朱音さんは小学校の頃からよく告白されてましたよね」
『…テツ君、今それ言っちゃう?』
「全部断ったのか?朱音は贅沢なのだな」
『真ちゃーん、その眼鏡割っちゃうよ?』
「じゃあ朱音ちんはどんな人がタイプなの~?」
『あっくんまで…最近の男の子って皆恋バナ好きなの?今、あたしの部屋で女の子たちが恋バナしてるはずだから、混ざってきなさい』
前言撤回しよう。今の僕はすこぶる機嫌が悪い。せっかく僕だけの朱音からの称号も、数分後には広まっていた。
「それは僕も是非聞きたいが、風呂の時間だ。お前たち、行くぞ。おやすみ、朱音」
『うん、おやすみなさい』
有無を言わさない様に真太郎たちに言えば、すんなりと着いてきて、体を洗った今、全員で湯船の中にいる。
「お前たち、話がある」
一言発すれば、遊んでいた奴らも全員視線が僕を捉えた。
「今朝の話だが、僕は気付いた。朱音は渡さないよ。もちろん、お前たちにもね」
「「「「「…そーこなくっちゃ」」」」」
いつもは僕の言うことに従う彼らが、不敵に笑い僕を見る。普段なら許さない行為だが、僕も朱音については対等の立場から彼らと勝負がしたかった。
そして合宿も3日目が終わり、旅館を後にした。いつの間にか朱音と連絡先を交換していた真太郎たちに、初めて気が抜けないと焦った瞬間だった。