第6章 合宿
「僕は…僕も朱音さんのことが好きです。小学生から、ずっと。赤司君にも誰にも負けるつもりはありません」
いつの間にか喧嘩をやめ、僕と赤司君の会話を聞いていた皆と眼が合うと、互いに笑いあった。
「相棒に加えライバルか。絶対負けねーからな、テツ!」
「相手が誰だろうと関係ないッスよ!」
「問題ないのだよ。俺はいつも人事をつくしているのだからな」
「めんどくさいけど、俺が全員ひねりつぶしてやるよ」
「やはり僕にはまだ分からないから、保留ということにしておくよ」
赤司君はまだ分かっていないようだったけれど、きっと時間の問題だ。ところでテツヤ、という声につられて赤司君を見る。
「もう朝食の時間は終わりだ。今日の練習、頑張ってくれ」
…死にました。
何とか言われたメニューをこなしたころにはもう体力はなく、風通しの良い場所で横になっていた。時折吹き抜ける風が心地よい。赤司君の少し離れた場所からは、練習中の皆の声がよく聞こえていた。
『テツ君?』
懐かしい声に呼ばれて眼の上に置いていたタオルを外すと、そこには汗を拭きながらマネージャーの方と歩いている朱音さんがいた。先に行っててとその方に伝えると、この場所には僕と彼女の二人になった。
『大丈夫?』
「大丈夫です。すみません、大事な話だったんですよね」
『ううん、大丈夫。大方終わってたから』
朱音さんとこうして話すのは久しぶりだった。同じ地区に二つの中学校がある僕たちの地域では、小学校を卒業して会えなくなる友人はたくさんいる。けれど、バスケをしている彼女なら帝光に行くと思ってた。また中学でも一緒にバスケが出来ると思っていた。
『なんかこうして話すのって久しぶりだね』
「僕も同じことを考えていました」
彼女はそっか、と言って、僕が好きなあの優しい顔で笑う。