第6章 合宿
もう一方のノートを指をさされたので、見させてもらうと同じように細かくびっしり書き込まれていた。たださっきと異なるのは、こっちのノートの方がより専門的に書かれていること。
「コレ全部若槻サンが考えてるんスか?」
『まあ一応監督だからね。経験者の大人がいないし』
「まるで赤司っちみたいッスね。まあ赤司っちもさすがにこおまでは一人でしてないけど。ちょっと見てもいいッスか?」
『あ、うん。それはもう終わったから見ても大丈夫だよ』
と言って今度は違う紙を出し始めた。暫くはノートに集中していた俺。どの練習も俺たちが普段やっているものとは全然違っていて、興味をひかれた。一通り見ると、彼女にノートを返した。
「凄い、の一言ッス。今度時間があったら俺にも考えてほしいッス!」
『ふふっ、うん。分かった』
「やった!って、あれ?それは何ッスか?」
『これは生徒会の資料だよ。今度の合同文化祭のね。あ、これは見せられないよ!なんたって企業秘密だからね!』
彼女は悪戯っぽく笑う。もともと本当に可愛い顔をしているから、どんな顔だって似合ってしまう。
「赤司っちと合同で企画してるやつッスか。楽しみにしてるッス!けど、せっかくの合宿なのに何で生徒会の仕事までやるんスか?」
若槻さんはバスケが大好きなはずなのに、と付け加えると困ったように笑う。
『それはそうなんだけど、本当は仕事あるのを無理矢理時間をつくってもらってここに来てるから。それに、最初こそは嫌々やっていた仕事だけど、今では楽しいからさ』
今度は優しく楽しそうに笑う。そんな彼女を見たからなのか、俺の口は勝手に動いていた。