第6章 合宿
俺は肩で息をし、やっとリングを潜ったボールを見て、若槻を見た。ちょうど腕で額の汗を拭いているところだった。
『やられた。やっぱ強いね、青峰君は』
「何言ってやがる。お前の勝ちだ」
結果は10対1。誰がどう見たって俺の負け。
『確かに点差としてはあたしの勝ち。けど、最後のゴールは今日の中で一番だよ』
にっこりと笑う若槻。
「ありゃ俺の中で最悪のゴールだ。お前が汗で滑ったのを見て、最後は俺とお前の決定的な差である身長を利用した」
『どんな形であろうとも、ゴールはゴール。それに青峰君、最後のダンクする瞬間、一番表情が輝いていてかっこよかったよ!』
「!?///」
みるみる自分の顔が熱くなっていくのを感じた。若槻があまりにも綺麗な顔で笑うから。あまりにも綺麗なバスケをしていたから。あまりにも真っ直ぐな眼で俺を見てきたから。柄にもなく俺は若槻の隣で一緒に景色を見たいと思ってしまった。
そう、初めて人に恋をした中学二年の合宿。
「青峰っち!何で負けちゃったスか!」
「あ?お前も見てただろうが!あいつは強ぇよ!あー、練習してェ!」
「朱音ちゃんかっこいい///」
「ばかじゃねーか?さつき。若槻はかっこいいじゃなくて、その…綺麗だろっ///」
「…青峰君!?」
「明日は天気が大荒れにならなければいいのですが」
「おいテツ!どういう意味だ!」
「大輝、元気が有り余っているようだね。走って帰って夕飯の準備をして来い」
「赤司!?何で!?」