第6章 合宿
練習が終わるとろくに柔軟もせずに目的の場所へ向かう。
「青峰っち?どこ行くんスか?」
後ろで黄瀬が聞いてくるけど、無視を決め込んで歩く。ネットをくぐり、隣のコートに入るとざわざわとどよめきが聞こえる。そして目的であった女、若槻の前に向かうと眼をぱちくりとさせた。
『…えっと…ごめん、何君だっけ?』
「…青峰大輝だ。覚えとけ」
『ごめんなさい。で、その青峰君があたしに何の用?』
茉実「ちょっとちょっとー。乙女の領域に簡単に入ってこないでくれるかなー」
「単刀直入に言う。俺と1on1しようぜ!な!いいだろ!」
多分そこにいた全員が口を開けたと思う。まだ若槻が基礎練習以外をしているのは見たことがない。だがオーラというかなんと言うか、ただ全身の細胞がこいつと勝負することを望んでいるようだった。
『…あたしは構わないけど、ちゃんと部活が終わってからにしよう。あたしも主将やってるから、自分のチームの練習は最後まで見なきゃいけないし。それじゃだめ?あとはミーティングだけで終わるから』
「別にいいぜ!俺たちもすぐ終わるはずだからよ!じゃ、後でな!」
かっは!やべー、久しぶりに興奮してきた。最近の相手はふがいない奴ばっかりで、退屈してきたんだ。どいつもこいつも、俺たちをキセキの世代と認識してからは、好戦的な奴が減っちまったからな。あー!早く練習おわんねェかな!
「あ!お!み!ね!く!ん!何言ってんの!?相手は女の子だよ!?しかも朱音ちゃんだよ!?」
「そうッスよ、青峰っち!この後は俺が挑もうとしてたのに…」
「あー、わりーわりー。ただ全身があいつと戦えって言ってるからよ!」
「青峰。勝手な行動は許さないぞ」
ふと前を見れば大変ご立腹な赤司。わ、悪い…と出た言葉を、赤司は溜息でまき散らした。
「…まあ良い。僕も彼女の力量を見てみたかったところだ」
というわけで俺は赤司の了承も得て、無事若槻と戦えるぜ!