第6章 合宿
「それにしても可愛いッスね~!何で紹介してくれなかったんスか、赤司っち!」
「青峰くん!あの朱音ちゃんが私と友達になってくれたんだよ!」
「バスケうめェのか?」
「お前の基本はバスケしかないのか、バスケ馬鹿」
「あの子いい匂いした~。甘くはなかったけど、花の匂い?」
「赤司君が以前一緒に歩いていた方は若槻さんだったんですね」
こいつらは確実に彼女に興味を示すと思っていた。だから彼女のバスケに取り組む姿勢は、試合でも見に行ってからと決めていたのに。
「無駄口が過ぎるぞ。今日の練習は徹底的に速攻の練習だ」
誰も彼女にこれ以上の興味を持たないようにと思いながら、僕たち帝光も練習を始めた。
今日は僕は指示を出す。部員たちの動きを見て、思ったことを口にする。体育館にはいいものようにバッシュのスキール音、ボールが弾む音、ボールがゴールをくぐる音。そして掛け声。いつもと同じだと思っていた体育館に、いつもと違う声が響く。
『茉実、遅い!もっとボールよく見て!』
茉実「はい!」
『凜子はもっと考えて!今はオールコートマンツーマンでしょ!そのことを忘れるな!』
凜子「はいっ!」
隣のコートに目を向けると、若槻がコート外から指示を出していた。彼女のバスケに向ける思いは相当な物だと感じ取れた。
「朱音ちゃん、凄いね」
「…桃井か。彼女はこの僕が認めた女だ。これぐらいやって当然だよ」
帝光のコートに目を向けると、大輝が食い入るように鈴城のコートを見ていた。