第20章 新しい家族を作りましょう
「父上、僕は正直な話、貴方との思い出はありません。母上を早くに亡くしてから十数年、僕にとってあの家は退屈な鳥籠でしかなかった。
仕事で忙しかったのは分かっています。バスケに出会うまで、コイツらと出会うまでの数年間、僕は我慢し続けた。授業参観で僕の家だけ誰も来ていない、僕はそれが当たり前で過ごしてきた」
当時はそんな事考えたこともなかった。けれど朱音に出会い、家族というものを考えた時に浮かんできた、この"寂しさ"という感情。
「それでも僕は1番であり続けた。父上に言われてきたように。だけど1番をとっても父上は何も言わなかった。それが当たり前だと言わんばかりに。いつしか僕は、1位であることが当たり前になった」
そんな僕を変えてくれたのは紛れもなく、朱音だった。
「彼女に出会って心を打たれました。常に1位である僕と同じ境遇である朱音が、ただ純粋にひた向きに勝利を目指して進んでいる。仲間と共に喜びを共有している。僕には眩しすぎた。
僕も彼女と同じように仲間と共に喜びを分かち合いたい。そう思っても時は既に遅かった。キセキの世代と呼ばれる僕達の心はすでにもう、バラバラだった」
3連覇した時、テツヤが言う通りそこにチームはなかった。そしてそのまま高校へ入学。心身共に確かに僕達はバラバラに散ったのだ。