第20章 新しい家族を作りましょう
『へ、変かな…?』
「…いや、よく似合っている。綺麗すぎて見惚れていた」
『あはは、ありがとう』
征ちゃんはゆっくりと近付いてきて、優しくあたしを抱きしめた。
「本当だよ、朱音。誰にも見せたくないくらいだ」
『…うん。ありがとう。それは征ちゃんもだよ。凄くカッコいい』
「天桐に頼んで良かったよ。あのギリギリのスケジュールの中、よくここまで準備してくれた」
『そうだね。優希物凄い張り切ってたもん。それに、皆にも感謝しなきゃね』
結婚すると決めてから約2か月しか準備期間が無い中、皆は自分の事のように手伝ってくれた。そしていきなり誘ったにもかかわらず、忙しいなか招待状を送った全員が来てくれた。
「朱音、僕は今幸せだ。君と今日、やっと家族になれる」
『あたしもだよ、征ちゃん。引っ越しも終わったし、今日からあたし達は家族だよ。凄く幸せ』
「改めて礼を言わせてくれ。僕と出会ってくれて、僕を救ってくれて、僕を支えてくれて、僕と家族になってくれてありがとう。これからもよろしくな、朱音」
『あたしからも。出会ってくれて、好きになってくれて、好きにならせてくれて、支えてくれて、家族になってくれてありがとう。これからもよろしくね、征ちゃん』
口紅がつくのもお構いなしに、どちらともなくキスをした。そして時間になったため、征ちゃんは一旦新郎控室へと戻る。入れ違いにお父さんとお母さん、お兄ちゃんが入ってきた。
兄「朱音、すげぇ綺麗だぞ。このままさらっちまいたいくらいに」
『そんな事言うと美樹さんが怒るよ?』
兄「もちろん美樹も連れて行くさ」
母「とっても素敵よ、朱音。世の中の男性が放っておかないわ」
『征ちゃんがそれを許さないよ』
母「それもそうね。…ほら、あなた。何か言わなくていいの?」
父「…朱音。姓は変わってもお前は俺達の家族だ。それを忘れるな」
『お父さん…はい。あたし、この家族大好きだもん。離れていてもそれは変わらないよ』
お父さんの言葉に溜めていた涙が流れそうになる。せっかくの化粧が台無しね、なんて言ってくるお母さんの目にも涙が浮かんでいた。あたしはタオルを使って綺麗にふき取る。
『それじゃあお父さん、行こうか』