第19章 あたし達は大人になった
「おはようございます」
『ただいまー』
母「あら、案外早かったのね!さ、上がってちょうだい!朱音は着替えてきなさい」
『はーい』
「お邪魔します」
着替えるために自分の部屋に入ると、下からお兄ちゃんの声が聞こえる。そしてお父さんの声も聞こえ始めた。慌ててあたしも着替えを終わらせリビングへと急いだ。
『お待たせ!って美樹さん!来てたんですか!』
美樹「お邪魔してるわね、朱音ちゃん。あ、そうだ。成人おめでとう!」
『わ、ありがとう!』
美樹さんはお兄ちゃんの彼女。少しおっとりした性格は、義姉としてあたしを抱擁してくれるような存在だ。そして美樹さんに征ちゃんを紹介する。2人が会うのは初めてだ。
「初めまして、朱音さんとお付き合いさせていただいてます。赤司征十郎と申します」
美樹「あらあらご丁寧に。話は聞いてるわ。智也君とお付き合いさせていただいてます、川村美紀です。よろしくね」
母「何か一気に家族が増えた感じねー!昼食は張り切らなくっちゃ!朱音、手伝ってね」
『はーい』
「その前に、大事なお話があります。お時間よろしいでしょうか」
スーツで来ている征ちゃんに気付いていた若槻一家は、これから話す内容にも察しはついていただろう。お父さんはゆっくりと読んでいた新聞を畳んだ。
「朱音さんを僕にください。正式に結婚したいと思っています」
征ちゃんは頭を下げた。あたしも同じように頭を下げる。2人の左手の薬指には昨日もらった婚約指輪が光っている。
父「…頭をあげなさい、2人とも」
テーブルにはお母さんが入れてくれたお茶が湯気を立てて熱を発している。お父さんは静かにそれに口をつけた。