第19章 あたし達は大人になった
『そっくりですよ。少し悲しそうにしたその表情も、その話口調も、その思考も。あたしと征ちゃんは物凄く思考回路が似てるんですよ。だからこそお父さんとも似ています。あたしには分かるんです』
赤司父「…君は面白いな。征十郎が惹かれるのも分かる。征十郎をよろしく頼む」
『はい。あと、余計なお世話かもしれませんが、征ちゃんも成人になったという事で、2人でゆっくりお酒でも交わしてみてください。違った(たがった)道が再び交わると思いますよ』
赤司父「ははは、あぁ。そうしてみるよ」
仕事の時間が迫っているお父さんに別れを告げ、あたしは征ちゃんと一緒にあたしの家に向かった。次はあたしの両親とお兄ちゃんにも結婚の話をしに行かなければならない。
『征ちゃんのスーツ姿、初めて見たかも』
「惚れ直したか?」
『うん。…!バカ///』
普通に言ってしまったあたしは恥ずかしくなり、征ちゃんに悪態をついた。征ちゃんは緊張してないみたいだ。征ちゃんは高校を卒業して東京に戻って来てから、何回もあたしの家にご飯を食べに来ている。今更緊張はしていないのかも。
『ねぇ征ちゃん。あのね…』
ゴッと音がしたかと思うと、隣にいたはずの征ちゃんがいなくなった。後ろを見ると、征ちゃんは電柱にめり込んでいた。
『征ちゃん!?』
「どうした」
『どうしたじゃないよ!征ちゃんがどうしたの!?』
「何言ってるんだ朱音、僕は別にどうもしていない」
と言いつつも、電柱を避ける事も無くひたすら前に進もうとしているため、どんどん電柱にめり込んでいく。やっとの重いで電柱から引きはがすと、ゆっくりと今度は手を繋いで歩く。すると落ち着いてきたのか、次第にいつもの征ちゃんに戻って来た。
「…どうやら僕は緊張してるみたいだ」
『…そうみたいだね。大丈夫よ、もうすっかりうちに馴染んでるじゃない』
最初こそはいがみ合っていたお兄ちゃんとも、今ではすっかりと打ち解けている。もう心配要素は無いと思うんだけど。