第19章 あたし達は大人になった
薄々感じていた。視線誘導が得意な僕には、朱音さんの眼に誰が映っているかは分かっていた。だけど、僕は気付かないふりをした。
『テツ君?』
「朱音さん、急に呼び出してすみません」
『大丈夫だよ』
ニッコリと笑って僕の隣に座る。僕が伝える事はただ1つ。
「赤司君との事、おめでとうございます」
『…その言い方だと、知ってたみたいだね。さすが幻の6人目は違うなー…」
幻の6人目。だけどそれはキセキの世代には敵わない。いくら凄い通り名がつこうが、所詮彼らの影である事に変わりはない。
『…テツ君、今変な事考えてたでしょ』
「変な事、ですか」
『テツ君にはテツ君の良い所いっぱいあるよ。あたしはもうテツ君が影だとは思わない。彼らと同じ、眩しい光だよ』
僕は朱音さんは超能力者なんじゃないかとも思う。僕の気持ちを知っている。僕が今欲しい言葉も。だけどこの想いには気付いていないだろう。
「僕にとっては朱音さんが光です。いくら僕達が光っても敵わない、絶対的な光。けど光りすぎて見落としてる事もありますよ」
『え、なになに?』
「それは僕の気持ちです。朱音さん、僕はずっとあなたの事が好きでした。それは赤司君と付き合った今でも変わりません。けど僕は2人を応援します。それが朱音さんが見落としている事です」
『…そっか。ありがとう』
朱音さんは最初と同じようにニッコリと笑った。小学校の頃から好きだった朱音さん。赤司君より勝っているとこはそこだった。
「赤司君はしっかりしているように見えますが、まだまだ子供の部分があります。朱音さんなら大丈夫だとは思いますが、何かあればいつでも相談に乗りますよ。そして場合によっては僕が奪います」
『あははっ、テツ君ってたまに凄い発言するよね』
朱音さんが朱音さんらしくあり続けれるのであれば、僕は喜んで影になりましょう。僕の1番の願い、それは
貴方が幸せに笑って過ごせる未来