第19章 あたし達は大人になった
帰ろうにも帰れない。朱音がいないんだ。赤司の発言を聞いてから、いつもは近くに感じていた朱音の存在を確認できない。
「どこ行ったんだよ…」
『大我君?』
「うぉっ!?」
目の前には探していた朱音がいた。少しだけ覗くブレスレットとネックレス。確か赤司もしていたっけ。あぁ、そう言えば俺、朱音と赤司が抱き合ってたの見たじゃねぇか。くそっ、何でこんなに心が痛いんだよ。…そんなの簡単だ。
「あぁ、俺は朱音の事が好きだったんだ」
『…へ?』
「!?いっ、いや!何でもねぇ!」
思わず口に出していた。何やってんだ俺は。朱音はもう赤司と付き合ってるんだ。俺の気持ちなんざ知った所で迷惑に決まっている。けどここで言わなくてもいいのか?はぐらかしちまってもいいのか?
「いや、何でもなくねぇ。今さら気付いたんだけどよ、俺は朱音の事が好きだ」
『大我君…』
「けど返事はいらねぇ。もう分かりきってるしな」
気付いたと同時に失恋、か。俺はもったいない事をしてたんだな。昔アレックスに好きになった女には優しくしろ、と耳が痛くなるほど言われてきた。俺は朱音に優しく出来ていたのか?
『大我君、大我君はもっと周りに甘えて良いんだよ。大我君は優しすぎる。けど、そんな優しい大我君があたしは大好きだよ』
「朱音…」
『ありがとう、大我君』
自分より遥かに小さい朱音に何度救われてきたんだろう。何度支えてもらったのだろう。そして今も。最後に俺に出来る事はなんだ。そんなのバカな俺にも分かる。
「幸せになれ、朱音。俺の分まで、俺の想いの分まで」
『…うん』
「深刻な顔すんなって!これからもよろしくな!あ、今度は俺と1on1してくれよ!」
最後に俺に出来る事。それは
笑って朱音の幸せを願う事。