第19章 あたし達は大人になった
そうか、やはり赤司と朱音は…
高尾「ま、まぁそんなに落ち込むなって!」
「高尾…悪いが先に帰ってくれ。俺は1人で帰れる」
高尾には悪いが今は1人になりたかった。けど神様は俺につくづく厳しいんだな。向こうから歩いてくるのは朱音だ。これは俺に与えられた試験だ。
「朱音」
『真ちゃん!1人?』
「大事な話があるのだよ」
俺は1呼吸置き、ゆっくりと朱音を見る。何の事か分かっていない朱音は、首をかしげながら俺を見上げる。
「俺は朱音が好きなのだよ。友人的な意味じゃない、男女として好きなのだ」
初めて会った時からなぜか惹かれた。そして俺の唯一の理解者だった。朱音がいたから俺は自分のバスケが出来た。朱音がいたから俺はおは朝を信じ続けられた。
「俺が俺であり続けられたのも、全部朱音のおかげだ。本当に感謝している」
『…あたしは何もしてないよ。真ちゃんが真ちゃんであり続ける事が出来たのも、全部真ちゃんの努力のおかげ。けど、真ちゃんの気持ちは素直に嬉しい。ありがとう』
「やはり俺は赤司には勝てん。将棋も勉強も、バスケも、恋愛も」
赤司はあらゆるもので俺より勝っていた。もしかしたら同じ女性を好きになった時点で勝負はついていたのかもしれないな。いや、これも運命なのだよ。人事を尽くして天命を待つ。赤司は俺より人事を尽くしていただけだ。
「だが俺は赤司に勝ちたいと思う。諦めるつもりはないのだよ」
『クスッ…それでこそ真ちゃんだよね』
「…幸せにならなければ許さないのだよ」
『うん』
この思いを伝えた事、後悔はしていない。最初こそはなぜ俺達を今会わせたのだ、とも思ったが。今、俺の心は清々しいものだった、
「じゃあな、朱音」
『うん、またね真ちゃん』
16年という人生の中で初めて恋をした。その相手が朱音で良かったのだ。そしてその相手が自分が認めた男、赤司だからこそ。そうだな、この恋に名前を付けるなら…
ありがとうなのだよ。