第19章 あたし達は大人になった
赤司と付き合ってる。そう聞いた瞬間、俺の中の何かが崩れた。テツに負けた時のように星を見ながら横になる。
『大ちゃん?どうしたの?』
俺の視界に朱音が入ってきた。ゆっくりと起き上がると、俺は朱音を隣に座らせた。
「…赤司と付き合ってるんだって?」
『…うん』
「いつからだ?」
『正式には今日から』
「そうか…」
インタビューの時、コイツの口からは何も伝えられていなかった。だからこそ、少しの可能性を望んでいたのかもしれない。
「朱音は、赤司が好きなのか?」
『…うん』
「俺も朱音が好き、って言ったら?」
『…え?』
やっぱり気付いてなかったか。初めこそはバスケのライバルってだけで良かった。けど朱音と公式戦では戦えない。そう実感してからはライバルだけでは物足りなくなっていた。朱音の傍にいたい、朱音と一緒にずっとバスケをしていたい。そう思っていた。
「冗談だ。…って言えたら楽なんだけどな。そんな言葉で消したりしたくねぇ。俺は朱音が好きだ。多分それは今後も変わらねぇ。けどそれは俺の我が儘だって事も分かってる」
『大ちゃん…ねぇ、バスケしよっか』
「…は?」
『早く早く!』
調度ボールを持っていた俺は、朱音に導かれるままコートに入る。そしてただひたすらに1on1を楽しんだ。そうか、これは朱音なりの返事だ。そしてこれは俺が言葉なんかよりも欲しかった返事。
「朱音、幸せになれよ。もし朱音が泣きそうになったら、俺が赤司をぶっ飛ばして、俺が朱音をかっさらってやる」
『ありがとう、大ちゃん。ありがとう』
少し涙を溜めた朱音だったが、最後まで笑顔を崩さずに去っていった。あー、ちくしょう。あそこで泣いてくれたら俺だって諦めきれたのかもしんねーのによ。けどこれが俺達の答えだ。
幸せになれよ、朱音。