第19章 あたし達は大人になった
その夜、俺は朱音っちを呼び出した。
「朱音っち、赤司っちと付き合ってるって本当なんスか?」
『…うん、本当だよ』
「…そっか」
溢れそうになる涙を隠すため、俺は下を向いた。声が震える。人の変化に敏感な朱音っちには絶対にバレてるんだろうな。それにしても…
「そーなんスかー。じゃあ俺はフラれたッスね!」
『…え?』
「今更言うなんて本当にダサすぎッス。けどやっぱりちゃんと伝えなきゃ俺は前には進めない」
大好きな朱音っちのためにも、俺はここでケジメをつけなきゃいけないんだ。
「ずっと大好きだった。1人の女性として愛してた」
朱音っちは驚いた後、泣きそうになるのをグッと堪えて、俺が大好きだったあの笑顔を見せてくれた。
『ありがとう、涼君。こんなあたしを好きになってくれて。涼君の気持ちは凄く嬉しい。けど…』
「あー、ストップ!もう言わなくてもいいッスよ。正直な話、赤司っちだったらって思うんス。最後に俺の大好きな朱音っちのままでいてくれて満足ッス。けどそう簡単に諦める事も出来そうにないんスよねー。てなわけで、赤司っちに泣かされたらいつでも俺の所に来てほしいッス!」
『涼君…ふふっ、ありがとう!』
「朱音っちが赤司っちと幸せになれるんなら、俺は全力でそれを応援するッス。好きな人には幸せになってほしいからね!じゃ、俺はもう帰るッスわ!足治してまたバスケやりたいし!」
『涼君!』
「?」
『…またね、涼君!』
「!…また連絡するッス!」
俺の大好きな朱音っち。きっと朱音っち以上に好きになる人は現れないだろう。それでも俺は、君の幸せを1番に願うよ。ちょっとくらい"カッコいい涼君"でいたいから。
素敵な恋をありがとう、朱音っち。