第18章 そしてWCは伝説となる
宗助「そんな!あれは視線誘導が出来て初めて撃てるもんだろ!?」
『使ってないんだよ。涼君は変則フォームを再現し、そこから真ちゃんのような高弾道で撃つことで初速を上げて視界から外したの』
客「こりゃまじで起きるぞ、大逆転!」
客「行けー!海常!」
会場からは海常コールが鳴りやまない。あたし達の周りの人達も、皆が海常を応援し逆転劇を期待している。
水希「何だよコレ…これじゃあまるで誠凛は適役(ヒール)じゃねぇか」
辰也「海常は完全に観客を味方につけたな。途中エースを欠き、それでもくらいつこうとする懸命のプレー。そして絶体絶命のピンチにエースが戻りそこから怒涛の追い上げ。応援したくなるのは自然海常だろう」
「こうなると苦しいのは誠凛ですね。差が詰まるたびに湧き上がる会場。ミスをすれば喜ばれシュートを決めても歓声はありません。追われる重圧にアウェーと化した会場。この中で平常通りプレーするのは至難の技です。誠凛はまだ経験が浅い」
さつきの言う通り、誠凛は若いチームだ。そして追い上げられた時の対処法を誰も知らない。そんな中日向先輩が3Pを撃つが、まさかのエアボールとなった。それをギリギリでテツ君がキャッチする。
藍「日向先輩がエアボールだなんて…」
梓「しかも黒子君がキャッチした時、溜息まで聞こえました。今まで応援し続けられてきた誠凛には、かなりキツいんじゃないでしょうか」
人の脳は~してはいけない、~するのはダメなどの否定的な命令を受け付けるようには出来ていない。ミスをしてはいけない、失敗してはダメ。そうした思考は体を硬くし、逆にミスを誘発する要因でしかない。そして一度ミスをしてしまえばもはや悪循環、考えるほどにミスを連発しプレーの質は低下していく。
兄「鉄平がファンブル!?」
そして海常のカウンター。涼君に対し大我君が何とか追いつくが体勢はバラバラで、とてもじゃないが止められるとは思えない。抜いた後ろから強引に大我君がファウルで止める。