第18章 そしてWCは伝説となる
『征ちゃん!試合見てたよ。お疲れ様、そしておめでとう。皆さんもお疲れ様です』
「朱音の言った通り、真太郎は昔と何も変わっていなかったよ」
葉山「え?何?何の話?」
玲央「ちょっと、うるさいわね!私達には関係ない事よ」
ここに来るまでに始まっていた第4Qを見ながら征ちゃんと話す。大我君がダブルチームを抜きてっちゃんにパス。シュートは危なげなく決まった。
根武谷「おうおうすんげーな。あのダブルチームをぶち抜くかよ」
玲央「そこからパスを出してフィニッシュ。シンプルだけど綺麗だわ」
葉山「今のワンプレイでも分かるよ。強ぇー誠凛!赤司、どう思う?」
「そうだね、準決勝まで残ってきたのも頷ける。とても出来て2年目のチームとは思えない。海常も良いチームだがやはり涼太抜きでは手に負えないだろう。先遣隊の報告では涼太は負傷交代。その前におよそ3分間例の新技を使用したと聞いている。両チームの戦力を踏まえ、そして涼太の新技の使用限界が残り2分だとすれば、15点差つければ誠凛の勝ちだ。朱音はどう思う?」
『あたしも征ちゃんと一緒かな。もちろん絶対じゃない。15点差あれば無敵の新技でも2分間での逆転は不可能に近い。最後まで逃げ切れる公算が一気に高くなる。けど…』
あたしには心に引っ掛かる事があった。それを征ちゃんも感じているのか、その無表情な今の顔からは読み取れない。
玲央「けど…?」
『涼君が…海常がこのまま終わるとは思えません。それに誠凛の置かれている状況も不安要素でしかありません』
葉山「不安要素?」
『それは…』
「ストップ。少しは自分で考える事もしろ。自分達が同じ状況に置かれた所を想像するんだ」
相変わらずメンバーの成長を考えてるんだな、と思った。早く帰ってくるように言われていた事を思いだしたあたしは、征ちゃんにその事を伝える。
「そうか、わざわざすまなかったな。アツシにも―――と伝えておいてくれ」
『うん、ちゃんと伝えておくよ。それじゃあまた明日。皆さんもまた』
誠凛の元に帰ってきた時には、お兄ちゃんと水希君に何かされなかったかと物凄く心配された。ただ話をしていただけだと伝えれば、少しホッとした様子だった。