第18章 そしてWCは伝説となる
兄「あーあ、鉄平の悪い癖が出たな」
水希「悪い癖?」
兄「癖っつーか、あいつ鉄心とか無冠の五将って呼ばれる事だけは嫌がるんだよ。俺も昔面白がって呼び続けたら、今も同じ状況になった」
『あの時は酷かったね…高2と良い大人の兄が低レベルな口喧嘩してたの見て、なんか泣きたくなったもん。それに去年はよくああやって喧嘩ばかりしてたんだって。喧嘩するほど仲が良い、まさに今の2人にはその言葉がぴったり。それに何だかんだで去年出来たばかりの誠凛を決勝リーグまで連れてった2本柱。頼りになる事に間違いはないよ』
そしててっちゃんはパワーで押し込み、日向先輩はついに森山さんの変則シュートを止めた。反撃時、てっちゃんのスクリーンによってフリーになった日向先輩がボールを持ち、3Pのフェイクを入れ中にもう一度戻してっちゃんがフィニッシュ。喧嘩中だとは思えないほど息は合ってた。
辰也「…強い。海常の気迫は鬼気せまるものがある。だが誠凛のそれも決して負けてはいない」
そして第3Qが終了する。同点だったスコアの点差は8点差までに開いていた。
インターバルを挟み落ち着いたように思えた会場がざわついた。一際大きいどよめきを生んでいる場所を見ると、ミーティングが終わったであろう征ちゃん率いる洛山が現れたのだった。征ちゃんはあたしの視線に気付いたのか、こちらへ手招きをした。
『ちょっと征ちゃんのとこ行ってくるね』
水希「は?何でだよ」
『試合の感想も伝えたいし、今の試合の展開予想も聞きたいから』
水希「じゃあ俺も行くよ。俺だって言いたい事あるし」
「やめといた方がいいんじゃないー?」
茉実「紫原君の言う通りだよ。朝すでに赤司君の反感買ってるし」
凜子「なるべく早く帰って来てねー!」
皆に後押しされ、洛山のいる席へと向かう。移動中何人かの人に声をかけられたが、全てに応えていたら長引いてしまう。征ちゃんの元に辿り着いた時、ざわめきがより一層大きくなった。
客「あれって誠凛の朱音ちゃん…やっぱり赤司と…?」
ざわつきが煩くて、一人一人が何を言ってるのか分からなかった。だから気にせずに征ちゃんに話しかける。