第18章 そしてWCは伝説となる
「あーらら、いきなりやられちゃったね~。でもさー、確かに黄瀬ちんのパーフェクトコピーは凄いけど、終盤もう一度使うとしたら差引大体残り2分に減ったんだし、結局速いか遅いかってだけじゃん?」
辰也「いや、そんな単純な話じゃないさ。試合には流れってのがある。奇襲は成功、そしてこの効果は朱音ちゃんの言うとおり、まだ続く。おそらくこれこそ海常の本当の狙いだ」
辰也さんと同意見のあたしはコートの中を見守る。この1秒でも早く差を縮めたいと思わせる場面で日向先輩の3Pは入らない。いた、だからこそ入らない。以前やった時とは1番の違いだけであるゴール下のてっちゃんがブロックするが、悪い流れは変わらない。大我君がシュートを狙うがそれも決まらない。
母「どうしたのかしらね、全然入らないわ」
「てゆーか早すぎでしょ」
辰也「あぁ…完全に浮足立ってしまったな」
水希「?リードされてるのは誠凛なのにか?」
辰也「おそらく誠凛は当初先行逃げ切りを目指したはずだ。ところが実際は予想外の奇襲にいきなり先行どころか大差をつけられてしまった」
『一刻も早く点差を縮めたい今、当然焦りが生じる。焦りは攻撃を単調にしミスを呼ぶ。ラン&ガンを得意とする誠凛とは言え、今のリズムは速すぎる』
梓「このままじゃ攻撃は空回る一方だよ」
リコさんの動きを見るためベンチを見ると、すでにリコさんは動いていた。そしてその結果を見ると、あたしはくすりと笑った。全員の視線はが集まったのを感じたあたしは、静かに誠凛のベンチを指さした。
審判「誠凛、メンバーチェンジです」
審判の声と共に出て来たのは1年の降旗君だった。
凜子「あははっ!凄くガチガチじゃん!」
藍「凜子も人の事笑えないよ?デビュー戦、凜子もあんな感じだったじゃん」
凜子は思い出したのか。別の方向を向いて口笛を吹き始めた。リコさんの意図が読めたあたしは、男バスと合同練習した時の事を思いだした。