第6章 合宿
合宿所に付き、お母さんと別れた。きちんと、ありがとうの言葉を忘れずに。
今回の合宿に選んだ場所は、秘湯の中の秘湯と呼ばれるそこそこの大きさの旅館だった。体育館も程なく近くにあり、ご飯も付いて疲労回復の効果を持つ温泉もある。合宿の場所は毎回必ず変える。それは良い思い出も悪い思い出も与えるから。全員が同じ思いを持つとは限らないため、新鮮な気持ちで行えるように手配には手を抜かない。軽く辺りを見回すと女将に告げ、とりあえず荷物を置いて体育館に向かった。
ウォーミングアップを兼ねて走って向かいたいが、荷物がそれをさせてくれない。体育館に入り、よろしくお願いしますと言えば、全員の視線があたしを捉える。
「「「「「「「こんにちは!」」」」」」」
元気の良い声が体育館に響き渡る。こんにちはと返すと、部員たちは再び練習を再開した。そして体育館を見る。かなり大きい体育館でまだ新しい。何でもこの街では活性化を図るためにスポーツ都市という概念をもちこんだみたいだ。あたしたちはその大きな体育館の半分をネットで区切って使用させてもらっている。あたしたちはステージ側だった。因みに半分といっても、いつも使っている鈴城中の体育館全面より広い。これは走り込みのし甲斐がありそうだ。
『遅れてすみません。今日から3日間、よろしくお願いします』
いつもはいない、顧問の北村先生に挨拶をする。いくらあたしが監督もやっているとはいえ、やはりまだ中学生。大人の引率は必要だった。
『遅れてごめん』
北村先生の元から、必死に部員を眼で追ってはノートに書き留めている藍に声をかける。あたしがいない間、副主将としてまとめてくれていた。
藍「気にしないで!って言いたいとこなんだけど…やっぱり朱音じゃなきゃダメだよ~!皆の入り方がやっぱ違うんだよね」
藍が言っているのは気持ちの入り方。確かに今でもどことなくやっているにすぎない部分も見える。
藍「ま、後輩ちゃんが少ない分まだよかった方かな」
ざっと40人という今までの部員数で最多となる今年の一年生。費用のこともあるため、今までの2・3年16名と有望そうな1年を4名ほど連れてきたいた。残りの1年には申し訳ないが自主練習としている。