第6章 合宿
さつきちゃんと別れた後、お母さんの運転によって合宿所へ向かっている。
『ねぇ、お母さん。あたしって凄く幸せだと思う。毎日大好きな人に囲まれて大好きな物に熱中出来て、人から求められている』
母「…そうね。お母さんはお父さんやお兄ちゃん、それに朱音のように誰かの上に立つっていう経験をしたことがないから最後のはよく分からないけど、朱音が今、幸せと感じれるならそうだと思うわ。それに、幸せと感じられることも幸せなのよね」
幸せを感じられることも幸せ、か。うん、確かにそうだ。幸せの価値観は誰もが異なるものだけど、幸せって思った瞬間はもう皆幸せなんだ。そして、この幸せを皆に届けて、誰もが幸福の世界を作りたいとも思う。もちろんそれはあり得ないことだと分かっている。悲しいかな、幸福の対語は不幸。つまり幸福が存在すれば不幸も存在することを、あたしはもう知っている。
母「そんな顔しないの。朱音は頭の回転が速いから、どんどん一人で突っ走っちゃうけど、お母さんはどんなことがあっても朱音の味方だからね」
『…ん』
あたしは嬉し恥ずかしくもなり、着いたら起こしてとお母さんに頼むと、合宿所まで仮眠をとった。