第18章 そしてWCは伝説となる
『作戦はさっき話した通りスタメンは茉実、優希、凜子、捺美、あたしでいく。ビデオでも見た通り、特に6番に至ってはあたしだと思ってくれてもいい。けど心配もしてないよ。皆が全力を出し切れば勝てるから』
「「「「はい!」」」」
『それじゃあいくよ、誠凛ーファイっ!』
「「「「オー!」」」」
あたしは腕からパワーストーンを、首から指輪を外すとコートに整列した。目の前には梓が立つ。あたしと同じ位置で結んだ髪色、髪型、同じアンダーシャツ、同じバッシュ、同じ靴下…違うのはユニフォームだけ。
梓「早くやろうよ!ずっと楽しみにしてたんだから!」
『そうだね…クスッ、あたしもだよ』
あたしの変化を感じたのか、梓は一瞬怯んだ。そしてボールは投げられ、今ティップオフ。藤ヶ咲ボールで始まった試合は、梓にボールが渡りあたしはすぐに前に立つ。
梓「わっ!いきなり朱音ちゃん相手かぁ…本気でいかせてもらうよっ」
梓はレッグスルーからのロール、フェイクを混ぜて抜こうとするが、それは全くあたしと同じパターン。止めるのは容易だった。
梓「さすがに抜けない、か。私もまだまだ朱音ちゃんになりきれてないなぁ。しょうがない、別の方法ね」
梓は抜くのをやめ、パスを回した。が、パスコースはあたしの考えと同じだった。スティールに成功するとそのままドリブルでカウンターが決まる。観客は盛り上がりを見せる中、決して誠凛は浮かれていなかった。梓は悔しがるどころかにっこりと笑っている。
梓「凄い…それでこそ朱音ちゃんだよ」
それからの動きはまるで別人だった。動作はあたしそのものでも追いつけない。けど同じようにあたし達にも藤ヶ咲は追いつけなかった。そして第1Qはそのまま点の取り合いで終了した。
優希「ったく、やりにくいわね…本当に私達自身と戦っているみたい」
藍「第1Qで28対28…かなりのハイペースだね。皆大丈夫?」
凜子「朱音に追い込まれてたおかげで何とか…」
『あら、良い事じゃない。じゃあ帰ったらさらに追い込んであげるね』
凜子は顔を真っ青にしながら引きつらせた。緊張した様子だった皆の表情に柔らかみが見えた。
『さ、皆の硬さも取れてきたみたいだし、こっちから攻めるよ』
茉実「何か策でもあるの?」
『もちろん。あのね…』
そして、第2Qが始まる。