第18章 そしてWCは伝説となる
水希君の頬を1粒の汗が流れ落ちる。
『水希君!』
「朱音、気分が乗らない。先にあの場所で待ってるから落ち着いたら来てくれ。もちろん1人でね」
征ちゃんは不機嫌のまま歩いて行った。誠凛の皆はまたかと言うように溜息をつき、周りの観客人は自然に散らばり始めた。
『水希君、大丈夫?』
水希「…あいつ、何なんだよ…俺に何をしたんだよ…」
『ちょっと怒らせたんだよ。でも大丈夫、征ちゃんはああ見えて優しいんだから、時間が経てば機嫌も直ってるよ。さ、立って?』
水希君は悔しそうに握りこぶしを作った。
『征ちゃんの事、嫌いにならないであげてね。もし嫌いになるとしても、征ちゃんのバスケを見てからにして』
水希「…そうだな」
水希君はあたしの言葉を分かってくれた。もう大丈夫だと判断したあたしは、藍に先に控室に行くように指示し、征ちゃんの元へ向かった。
『お待たせ、征ちゃん』
「…あの男は?」
『水希君ならもう観客席にいるよ。お兄ちゃん達ももうすぐ着くはずだから』
「そうか。…朱音、僕は間違っていたのか」
『…そうだね、少しムキになりすぎちゃったかな。せど征ちゃんだけを責める気もないよ。水希君も子供っぽいトコあるから』
「だがあの男は僕から朱音を奪おうとした。君は鈍感だから気付かないと思うが…」
『知ってるよ。昔、水希君から告白されたしね』
「…は?」
それは小学6年の時、初めて会った時の帰りだった。バスケに夢中だったあたしは断ったが、もう何年かしたら朱音も振り向くほどのイイ男になってやるからそれまで待ってろと言われた事を伝えた。すると征ちゃんは笑ってみせた。