第18章 そしてWCは伝説となる
征ちゃんはきちんと考えてくれていた。お父さんにも負けず征ちゃんは言い切った。そしてあたしもきっと征ちゃん以上に好きになる人は現れないだろう。お父さんはゆっくりと口を開いた。
父「…良かろう。お前達の事に今後口を挟まない。ただし、交際する時はきちんと伝えなさい。さぁ、食事を続けよう」
「ありがとうございます」
それからお父さんと征ちゃんはゆっくりと箸を進めた。あたし達も食事を続ける。暫くは無言になってしまったけど、今ではすっかり将棋の話で打ち解けたようだ。そして征ちゃんにお風呂に入るように言い、お兄ちゃんと一緒にてっちゃんのマッサージを手伝う事にした。
兄「…朱音、鉄平のアイシング頼むわ」
以前からてっちゃんのマッサージは手伝っていたが、アイシングを頼まれたのは初めてだった。お兄ちゃんは気付いている、あっ君との試合で無茶した事を。
兄「どうやらギリギリ膝の悪化は防げたようだが…何があった」
木吉「…どうしても勝ちたかったんです。キセキの世代のいるチームに」
『お兄ちゃん、てっちゃんを責めないであげて。てっちゃんはてっちゃんなりに考えて…』
兄「朱音、お前知ってたのか。それなのにどうしてここまでやらせたんだ!」
お兄ちゃんがあたしに怒鳴る。ここまで怒っているお兄ちゃんを見るのは久しぶりだった。けどこれはてっちゃんを心配してくれる何よりの証拠だった。
『…ごめんなさい。けどあたしには止められなかったの!』
兄「鉄平がどうなってもいいのかよ!」
『そのてっちゃんが皆と一緒に勝ちたいって心の底から願っているんだったら、止められるわけないじゃない!』
木吉「朱音、もういい。智也さん、全ては俺が悪いんです。俺が勝手に許してほしくて朱音に話して、否定する事を拒否させてまで応援させたんです。すいませんでした」
兄「…いや、俺の方こそ悪かった。朱音もごめん。ただ俺は…」