第18章 そしてWCは伝説となる
「確かに似ていますが、ただの真似じゃないですか。…!もしかして…」
藍「黒子君の言う通り、6番の1年PG…名前は市谷梓(いちがや あずさ)。あの子のプレイは朱音そっくりなの」
茉実「そっくりって言うには似すぎている。黄瀬君の模倣と同等と言って良いくらいに。それにプレイどころか戦略までそっくりなの」
あたしにそっくり…まだ信じられないあたしに、藍がビデオを見せてくれた。確かに似ている。あたしだったらここにパスをするというタイミングとそのコースが全く同じだった。暫く画面に夢中になっていたあたしの肩を誰かが叩いた。
『…綾』
綾「…ごめん、朱音。負けちゃった」
綾の目は真っ赤になっていた。そして手も声も震えている。悔しいはずがないわけないのだ。
綾「もう知ってると思うけど、あの6番は本当に朱音そっくりだよ。でも私はあの子を朱音とは認めない。だからお願い、朱音…絶対に勝って!」
『綾…もちろんだよ、綾。勝負は次のIHまでお預けだね』
綾「…もちろんよ。それまでにもっと巧くなってみせ…」
?「あ!朱音ちゃん!」
綾の言葉はやけに明るい聞いた事がない声によってかき消された。声にした方を見ると、あたしと同じ頭を持つあの6番、市谷さんが走ってきた。
梓「わー!本物の朱音ちゃんだ!うー、初めて喋るからドキドキが止まらないよぉー…」
市谷さんは顔を両手で多いながら話してくる。指の間から見えた彼女の顔は真っ赤だった。あの凜子でさえ圧倒されて何も言えないようだった。
『あの…市谷さん』
梓「えっ!?朱音ちゃん、私の名前知っててくれたの!?どうしよう…嬉しすぎてもう死んでもいいくらいだよぉー!」
?「こーら、梓。何困らせてんのよ」
梓「あっ、蘭先輩!」
市谷さんを止め、颯爽と現れた蘭と呼ばれる選手は、女子にしては高い身長を持つ人だった。おそらく180cmはあるだろう。市谷さんはその蘭さんにこっぴどく叱られている。そして今度は蘭さんがあたしに謝ってきた。