第6章 合宿
―「若槻か。どうした、こんな時間に」
電話越しとは言え、ここまで言い口が柔らかくなった赤司君は初めてだった。
『えっとね、帝光のマネさんの桃井ちゃんと会ったんだ。赤司君のやり方に背くようだけど、あたしに任せてもらってもいい?』
何の話だろう。私のことだとは思うけど、赤司君のやり方に背く?
―「…全く君には参るよ。忙しい時期に申し訳ないが、そちらは頼む」
そうだ、彼女は自分よりも忙しい。赤司君を見ている私には凄く分かってしまった。電話を切った彼女は、立てる?と私に聞いてきた。しばらく安静状態が続いてからなのか、ようやく私も声が出るようになった。
「あの、大丈夫です。若槻さんはもう行ってください。いろいろありがとうございました!」
『…桃井ちゃん、あなたが皆に迷惑をかけたくないって気持ちは分かる。けど解決することが皆のため、って考えたことない?少なくとも、あたしだったらそうしてほしい。赤司君もそう思ってるはずだよ』
「な…んで…」
すると彼女は、あたしと赤司君の思考回路、すごく似てるみたいだからと笑って言った。解決することが皆のため。そっか、私は黙ってることで皆に迷惑をかけてたんだ。
『とりあえず、あたしの家に行こう。知り合いの家がすぐそこにあって荷物置きたいんだけど、ここで待ってる?一緒に行く?』
「あ、一緒に行きます…」
今はどうしても一人になりたくなかった。彼女は私の前をしっかりした足取りで歩く。私は助けられたんだ。彼女の小さいけど大きく見えてしまう、あの背中に。