第18章 そしてWCは伝説となる
暫くの間、あたしは征ちゃんの胸で泣き続けた。
『征ちゃん…征ちゃんっ!怖かったよ…征ちゃん…』
「…遅くなってすまなかった。僕がもっと早く来ていれば…」
『ううん、征ちゃんは助けに来てくれた。それだけで十分だよ』
「朱音…!朱音、その首の跡は…」
『えっ?…あ』
あの時の痛みの原因はコレだった。首筋には1点だけ赤い跡、所謂キスマークが付けられていた。正真正銘、これは灰崎によって付けられたモノ。
「…すまない」
『や、やだなぁ。征ちゃんが謝る事じゃないってさっきも言ったでしょ?それにこんな跡、こうやって擦れば消えるよ』
あたしは自分の腕を首に擦りつける。自分でも震えているのが分かる。やだ、こんな跡今すぐにでも消してしまいたいのに。けれど消えない。首の周りが赤くなってもその1点だけは消えないのだ。
「朱音。もうやめてくれ。これ以上やったら首が傷ついてしまう」
『大丈夫だよ、征ちゃん。もう少しで消えそうだから』
あたしは必死に腕を擦る。何度も何度も。だけど征ちゃんによってそれは止められた。