第18章 そしてWCは伝説となる
あっ君を見るとどうやら泣いているようだった。
「ムッ君もしかして最後、ゾーンに入ってた?」
「あぁ…誠凛の3Pが決まって1点差に詰められた時からだ。追いつめられて扉を開いたんだろ。それでも最後はあと一歩足りなかったけどな」
「けどゾーンに入るのに必要なバスケを好きな気持ち、ムッ君にはずっと無かったはずでしょ?」
『それでもあっ君は入った。つまりは、そーゆー事だよ』
「じゃあ俺らはそろそろ帰るわ。じゃーな、朱音。お前も頑張れよ。行くぞさつき」
「えっ!?きーちゃんの試合見ないの?」
「黄瀬は勝つにきまってんだろ」
「でも次の試合の相手は…ううん、向こうで話すよ。またね、朱音ちゃん、皆」
2人に手を振ってあたしも皆に向き合う。あっ君の所に行ってくると告げる。廊下を歩いていると、1人でとぼとぼと歩いているあっ君を見つけた。
『あっ君』
「朱音ちん…今はこっち来ないで」
『そんなわけにはいかないよ。今のあっ君をほっとけない』
「ほっといてよ。それに朱音ちんには関係ねぇし」
『…そう。じゃあ帰るね』
「待って!」
あっ君は目に涙を溜めてあたしの腕を掴んで引き留めた。もちろんあたしは最初から帰る気なんてなかったため足を止める。