第6章 合宿
先輩たちも相手が他校とは言え、生徒会長という肩書に怯む。それを彼女は見逃さない。
『で、あなたたちはここで何をしてるんですか?見たところ、良い行いではなさそうですが?』
先輩「べ、別に何もしてねーよ。これはあたしら帝光の問題なんだ。鈴城の生徒会長さんは引っ込んでな」
『そうですか。それは残念です。今鈴城と帝光さんは合同で文化祭の企画を進めてるのですが、まさかこんな素行をしている人たちを放ってしまって、一生懸命準備した企画をつぶされたくはありませんので、これらのことは帝光の先生方の耳にも入れておかなければなりませんね。ではまた』
先輩「ちょ!ちょっと待て!」
『…なんですか?あたし、これでも急いでいるので』
ニコリと微笑む彼女の眼は笑っていなかった。一瞬だけど、私はあの有無を言わさない眼に覚えがあった。赤司君のように。
先輩「…別に何もしちゃいないよ。ほら、行こうぜ」
先輩は残りの人たちを連れて、罰が悪そうに去って行った。今この場には若槻さんと私しかいない。お礼を言いたいけど、口を開けば絶対に涙が出てくる。そんな私に気づいてか、洗濯された良い香りのするタオルが差し出される。
『大丈夫ですか?泣きたいときは思いっきり泣けばいいんです。誰も見ていませんから』
彼女の言葉に、私の中で防波堤を担っていた壁が崩れていくのがはっきりと分かった。そして久しぶりに声を出して思い切り泣いた。