第18章 そしてWCは伝説となる
分かってる、そう言わんばかりに優しくあたしを見つめる。
『ありがとう、大ちゃん。けどあっ君の言う通りなのかな』
「…んな事はねーよ。事実テツは俺に勝った。あいつは努力してその結果を手に入れたんだ。それに朱音が信じてやらねーで誰がアイツらを信じてやるんだよ。しっかりしろ、俺もいるんだからよ」
『大ちゃん…そうだね、ありがとう』
「わー、大ちゃんってばキメちゃってー」
「なっ!うるせーよさつき!ほら、そろそろ始まるぞ」
大ちゃんのおかげで気持ちが落ち着いたあたしは、再びコートの中に目を戻した。攻守ともあっ君を中心に固まっている。終いにはてっちゃんのバイスクローまでやってのけ、戻ってた大我君とてっちゃんを吹き飛ばした。
『!?てっちゃん!』
「「「「「木吉先輩!」」」」」
てっちゃんは起き上がる事は出来なかった。完全に限界がきている。それでも起き上がろうとしているてっちゃんを見て、あたしは泣いていた。この試合にかける思いは相当なもののはず。てっちゃんの腕を掴んで引き起こした手はあっ君のモノだった。
「あーあ、もう限界だね。これが現実でしょ。結局アンタはなす術なく、あげく体力も尽きた。そして引っ込めばもう俺をどうこう以前にインサイドは完全に死ぬ。どうあがいても誠凛は負けだよ。で…どう?また何も守れなかったわけだけど、楽しかった?バスケ」
『あっ君…』
さっき飲み終えた空のペットボトルを無意識のうちに握り潰していた。心配する周りの皆はあたしに何も言えなかっただろう。それくらい怒りが湧いていた。けどあっ君はそれが当たり前だとずっと思ってきた。今更どうこう言っても何も変わりはしないだろう。メンバーチェンジが告げられ、てっちゃんの代わりにテツ君が出て来た。