第6章 合宿
~6.合宿~
文化祭までとうとうあと1か月。それぞれのクラスの希望もとり、早いクラスはもう準備に取り掛かっていた。生徒会の仕事も例には漏れない。学生の3倍以上はある仕事を喝破しからこなしていかなければならない。けれど部活だって同じ。文化祭が終われば全中予選がすぐに始まる。3年にとっては最後の大会だ。それを生徒会だからって理由で終わらせたくない。あたしと藍は出来る限り仕事を持ち帰って、まとめて休みをもらえるように頑張った。そのおかげで今日から合宿が始まる。
『お母さん、じゃあスポーツ店とかから電話があったら、あたしに連絡しね!』
母「はいはい。何回も聞いたわよ」
兄「あれ?朱音。こんな早くから行くのか?」
『もう、お兄ちゃんってば。昨日も言ったじゃない。あたしは今日から合宿!』
兄「そう言えばそうだったな。けどあんま無理はさせんなよ?今が成長期真っ最中なんだからよ」
何かあったら連絡しろ、という兄の大きな手はあたしの頭に置かれた。あたしの家族は父と母と兄の4人暮らし。父は会社を経営している、いわゆるちょっとしたお偉いさん。母はそんな父を専業主婦として支えている。兄とは歳が離れており、もう立派な社会人だった。スポーツジムで働いている兄からは、練習メニューの作成とかを手伝ってもらったこともある。とにかく家族皆仲がいいのだ。そして自慢の家族。
父「気を付けてな。困ったことがあればすぐ連絡するんだぞ」
『ありがとう、お父さん!じゃあ行ってきます!』
元気よく家を飛び出す。連休を利用して行われるこの合宿は2泊三日。つまり約三日間は大好きなバスケに夢中になれる。…もちろん生徒会の仕事があるんだけど。
駅までは鈴城中を過ぎ、帝光中も過ぎて少しした所にある。あたしの家からそこまで離れてはいないけど、さすがに荷物もあるから今日は自転車だ。爽快に駆け抜けると休みの日にしては珍しい制服姿を見つけた。あの制服はもう見慣れた帝光中のモノだった。
遠くからでもあり、背中しか見えなかったが、どうやらいじめみたいだ。一人の女生徒を3人の女生徒が暴行を加えている。気が付いたらペダルを漕ぐ力は全開だった。