第5章 帝光中にて
そして今は鈴城中に帰り、放課後を迎えていた。帰り道からずっと元気がなく、帰ってからも茉実たちの質問攻めにも答えず、どことなくボーっとしている藍。あたしは自分のメニューが終わって部員の動きを見ていると、隣からタオルが差し出された。藍だった。
『ありがとう、藍。で、今日はどうしたの?』
藍「…朱音は、赤司君のことが好き?恋愛として」
『?そりゃぁ友達として好きってのは思ったけど、恋愛かぁ。それは無いよ。なんで?』
藍「本当に!?」
『え、うん…』
近い。藍の顔がとてつもなく近い。このままキスしちゃうんじゃないかってくらい近い。そのままじっと眼を見つめられる。あたしは動けなかった。タオルで拭ききれなかった汗が体育館に落ちる。その音でさえも聞こえてしまうんじゃないかってくらい張りつめた空気がそこにはあった。
藍「よかったー!そうだよね、朱音はあたしたちの朱音だもん!あたしたちが護らなきゃ!」
という訳が分からない誓いをされ、うん…としか言えなかった。そして抱き着いてきた。
『ちょ、藍!汗まだ拭けてないんだからやめなさい!』
藍「やだ!朱音の匂いがする!私は朱音の汗まで愛す!」
もう駄目、この子分からない。落ち込んでると思ったら急に元気になってコートの外にいる選手の元へ走って行った。
茉実「やーっといつもの藍に戻ったね。何かあった?」
『茉実…それはあたしが激しく知りたいよ』
とにもかくにも藍の調子が戻ったことは良かった。あたしはコートの中に入ると、次の指示を出した。