第18章 そしてWCは伝説となる
宗助「おおー!勝った!勝ったぞ!」
花帆「キャー!凄い、皆凄いよ!」
あたしはあれからずっと握られていた手を見る。そして自分の手の甲に涙が落ちた。ああ、またあたしは泣いているんだ。けどこれは嬉し泣き。コートの中を見ると皆も嬉し泣きに目を濡らしていたと同時に、眩しいほどの笑顔だった。反対に桐皇の人達は放心状態だった。特に大ちゃんは。
「負け…た…?そうか、負けたのか…俺は」
『大ちゃん…』
あたしは勝った誠凛だけでなく、精一杯戦った桐皇に、そして大ちゃんにも届くようにひたすら拍手を送った。皆も同じように拍手を送る。それにつられてか、会場からも両校に向けて拍手が送られた。整列時にテツ君の体は倒れかけ、大我君に支えてもらっていた。
「ったく…支えてもらって立ってるのがやっとかよ。これじゃどっちが勝ったか分からねーじゃねぇか。けど…それで良かったのかもしんねーな」
結局敗因はその差だった、まるでそう言いたげなようだった。
「…何もう全部終わったような顔してんだよ。まだ始まったばっかだろーが。またやろーぜ、受けてやるからよ」
「…かはっ、ぬかせバァカ」
「…青峰君」
「お前の勝ちだ、テツ」
「…1ついいですか」
テツ君は自分の左拳を突き出す。まるで昔やっていたみたいに。
「あの時の拳をまだ合わせていません」
「…なっ、はぁ!?いーじゃねーかそんなもん!」
『嫌です。大体シカトされた身にもなってください」
「…分かったよ、ただしこれっきりだ。次は勝つからな」
「はい」
あたしは昔から2人のこの姿を見るのが大好きだった。そしてこの姿をみるのはもうこれが最後。テツ君と大ちゃんは完全に敵である事を望んだのだ。互いに認め合う、好敵手である事を。そしてあたしは荷物をまとめだす。
茉実「…行くの?朱音」
花帆「えっ?どこに?」
『うん、行ってくる。花帆、宗君。今日は見に来てくれてありがとう。まだこれからも試合あるからまた見に来てね』
宗助「おう!これから毎日来るぜ!朱音の試合も見たいしよ」
『ありがとう。それじゃ藍、後はよろしくね』
藍に皆の事を任し、花帆と宗君に別れを告げ体育館を後にした。