第18章 そしてWCは伝説となる
『普通のシュートならね。けど高速で動きながらリングを狙うなら別だよ。一瞬の視線のズレも速ければ速いほど幅は大きくなる。大我君とてっちゃんがギリギリまで追いつめた事によりこれは完成した。この勝負、テツ君の勝ちだよ!』
高速で動く相手のシュート精度を下げるミスディレクション、まるで大ちゃんのためにあるような技だった。残り5分弱、ついに6点差まで追いついた。そしてここでゾーンプレス、しかも1-2-1-1。誠凛はもう1本捕る気だ。
藍「ここでゾーンプレス!?もし突破されたら…」
花帆「ゾーンプレスって?」
『個々の体力と高いDF力が必要な上級陣形の1つで、ボール奪取率は高いけど突破されると脆い、諸刃の剣のようなものだよ。そして使うなら今ここしかない。勝負所の嗅覚はちゃんと持ってるよ』
そして上手くいったかのようにテツ君のスティールが決まり日向先輩へ。ただ止めなければと言う使命感からなのか、桜井君はファウルで突っ込んできた。これはシュート時のDFファウル、しかも3Pライン。
茉実「フリースロー3本…もし全部決めたら3点差!」
『しかもシューターは日向先輩だからまず外さないよ。つまりあと3P1本分の差。勝利が一気に近づく!…!?』
捺美「青峰君がセットから外れた…?」
あたしはこの感じを知っている。そして頭の中に大ちゃんの声が届いてきた。
「いつからだろう、試合の日の朝欠伸をしながら家をでるようになったのは。いつからだろう、勝っても何も感じなくなったのは。ただ俺は全てをぶつけさせてくれる相手が欲しかった。朱音のような女のライバルじゃなく、試合で対等に渡り合える相手が。ずっと望んでいた、勝つか負けるか分からないギリギリのクロスゲームを」
『大ちゃん…』
そして大ちゃんは自力でゾーンに入った。
茉実「そんな!ゾーンは朱音みたいにずっと重ねなきゃ出来ないんじゃないの!?」
『少し違うかな。ゾーンの練習をしてないからって入れるわけじゃ無い。大事なのはそれまでの練習をどれくらい重ねて来たか。それに大ちゃんの才能でならその扉を自力でこじ開けるのは簡単な事だよ。けど改めて思い知らされた。これがキセキの世代エース、青峰大輝!』