第18章 そしてWCは伝説となる
雅「あれ?イグナイトは火神君以外捕れないんじゃなかったっけ?」
『それだけ成長したって事だよ。多分もう普通のイグナイトなら皆捕れるんじゃないかな』
そしてここにきて初めての誠凛リード。流れは完全に誠凛であり、その流れを作ったのは紛れもなくテツ君だ。だけど動いていない人がまだ1人いる。あたしは桐皇のベンチに目を向けた。今吉さんのシュートにより再び桐皇がリードしたのをきっかけとし、今吉さんはテツ君のマークについた。そしてテツ君は今吉さんのマークが外せない。
茉実「これって…朱音が中学の文化祭の時に使ったやつ…?」
『多分ね。相手チームにはさつきがいるし、あの試合の時だって見てたからね。彼女が見逃しているとは思えない』
あたしが昔やったテツ君対策。それはテツ君自身を見ようとするのではなく、周りを見ようとする事。あの時はまだテツ君の力は今よりも大幅に劣っていたから、周りの動きを見るだけで対処出来た。だけどミスディレクションを更に磨いたテツ君とのアイコンタクトを追うのは困難だ。それを簡単にやってのける今吉さんは純粋に凄い。
藍「今吉さんは相手の心を読む能力に長けている。黒子君、ああ見えて分かりやすい所あるし、今吉さんからしてみれば手に取るように分かるかも」
追い打ちをかけられるかの如くバリアジャンパーも破られる。もちろん重心移動の事を熟知した上での対策だった。テツ君が封じられ、先輩達へのマークも前半以上に厳しい、残るは大我君しかいなかった。ボールを持った時に無意識にシミュレーションを行ってしまったのか、ほんの一瞬だけ躊躇ってしまった。本当にごくわずか、けど大ちゃんは確実にその隙を狙った。抜かれた大我君はヘルプに入った日向先輩をかわした時に戻っていた。大ちゃんのダンクに合わせて跳ぶが、大ちゃんは空中で1回転して決めた。
凜子「何で…青峰君は本気なんて出してなかったって事?」
『本気だったよ。けどあくまで大ちゃん自身のね。大我君が身に着けた野性は大ちゃんも持っていた。そして今はその野性状態での本気って事。本気でプレイする事が極端に減ったせいで勘が鈍っていたようだけど、大我君との戦いで取り戻したんだよ』
あたしはその時、立場も何もかも忘れて大ちゃんを見ていた。凄い、ただそれしか頭にはなかった。それだけ大ちゃんはバスケット選手として究極の域にいた。