第18章 そしてWCは伝説となる
それからは2人とも止まらなかった。更に早くなった大ちゃんに大我君も追いつく。大ちゃんの背面シュートや大我君のレッグスルーからのジャンプシュート。もはや2人の戦いに誰もが手を出せないでいた。あまりにも突出した存在であるキセキの世代を擁するチーム同士の戦いではこういう展開になる。けどそれが今、大我君と大ちゃんの間で起こっている。
花帆「凄い…これってこのまま続くの?」
『ううん、多分この均衡はすぐに崩れると思う。2人とも全開でやってるけどまだ100%じゃない。少しずつだけど確実に鋭さが増してきてる。けど…』
そうなった時、はっきり言って大ちゃんが負けるとは思えない。このマイナスの言葉を皆に聞かせるわけにはいかなかったので、あたしは言葉を飲み込んだ。だけど大我君は止まらなかった。そして大ちゃんの全開のフォームレスシュートをブロックした。
『まさか…そんな事があり得るなんて…大ちゃんより大我君の方が上…!』
大我君は大ちゃんのOFに全て反応していた。しかし大ちゃんの方がトップスピードが上である事に変わりない。それに大我君が大ちゃんの動きを読んでいるとも思えない。かと言って動きを見てから反応して着いていけるものでもない。あの自然体の構やそこからの超人的な反応速度…
藍「これは一体…?」
『上手く言えないんだけど、今の大我君の雰囲気は野生の獣のそれに近い。分かりやすく言うと、野生の勘ってとこかな。多分アメリカに戻った時に身に着けてきたんだと思うけどね。野生って言うのは才能じゃなくて、修練の先に得る力なの。五感が研ぎ澄まされたその感覚はバスケにおいて予測とかより更に速い反応を可能にする。ついでに言うと人より高く跳べる大我君は、人より速く跳ばなきゃ意味がない。最高点に達するまでそれだけ時間がかかるからね。大我君の跳躍力は野生と組み合わさってこそ真価を発揮するの』
残り3秒、大我君はまるで大ちゃんのフォームレスシュートに近いやり方でゴールを狙った。大ちゃんの指がかろうじて掠め、シュートは決まらなかった。けど1度大きく開いたはずの点差は2点ほどまでに縮まっていた。そしてインターバルに入る。