第18章 そしてWCは伝説となる
あと少しで完成というところでお腹の辺りに温かみと重みがきた。征ちゃんの頭だった。
『ちょ、征ちゃん!誰か来ちゃうよ///』
「良いじゃないか。久しぶりに愛する朱音に会えたんだ。これぐらい許されるはずだ」
『…もう///そんな恥ずかしい台詞よく平然と言えるよね』
「前にも言っただろう、僕は正直に生きているだけだよ」
それから征ちゃんとあたしは暫くこの体勢のまま動かなかった。そして征ちゃんは、朱音の匂いはやっぱり安心するなと一言。それは征ちゃんの匂いも同じだよと伝えると照れたのか、征ちゃんはお腹の前で頭をぐりぐりと動かした。くすぐったくなったあたしは我慢出来ずに笑ってしまった。すると征ちゃんも笑顔を浮かべながら頭を離した。そして切り残した前髪を切る。切り終えたあたしはバッグの中から手鏡を取り出し、征ちゃんに見せた。
『元が短くなってたからこんなのしか出来なかったんだけど、どうかな?』
「上出来だ、ありがとう。朱音」
『どういたしまして。そろそろ行かなきゃ。皆心配してるみたい』
携帯を開くと物凄い数の着信が入っていた。全部茉実達からの物だったけど。その画面を見せると征ちゃんは苦笑する。
「過保護なのも相変わらずなようだな。僕もそろそろ戻らなきゃならない。それじゃあ朱音、お互い頑張ろう」
『そうだね。けどあたしは征ちゃんのバスケは好きじゃない。だからあたしは誠凛の皆を応援し続けるよ』
「…随分とはっきり言うんだな。だが朱音らしくて面白い。僕は全力で君の敵である事を望もう。ただしそれはバスケの時だけだ」
『もちろんだよ。けど一言だけ征ちゃんに言葉を贈るとしたら、やっぱり頑張ってね、かな』
「くくくっ…やはり僕は朱音の事が好きだよ。では、またな」
征ちゃんは最後まであたしを照れさせて帰って行った。あたしは赤くなった顔の熱が引くまで待ち、皆が待っている場所に向かおうとした時、ちょうど男バスが控室に移動しようとしている時だった。