第18章 そしてWCは伝説となる
そして移動した場所は滅多に人が来ないであろうベビールームだった。
「改めて久しぶりだな、朱音。髪伸びたな」
『切りに行く暇が見つからなくて。そう言う征ちゃんも髪伸びたね。特に前髪』
「邪魔だからそろそろ切ろうと思ってるんだが…それより朱音、ちゃんとコレをつけているか?」
征ちゃんはそう言うとジャージの袖を捲り上げる。そこにはあたしがあげたパワーストーンのブレスレットがあった。もちろんだよと伝え、あたしも同じように袖を捲り上げる。
「それなら良いんだ、それとすまない。僕は今から真太郎達に会いに行く約束をしていてね。朱音にも来てほしい」
『えっ、それってあたしが行ってもいいの?』
「構わないさ。あいつらだって朱音に会いたいに決まっている」
征ちゃんに説得され、あたしは少し離れた所でいいならと同意した。そして体育館から少し離れた階段に皆はいた。もちろんテツ君も。あたしが今いる場所からは皆の姿は見えても皆からあたしは見えない。けれどはっきりと声は聞こえる距離だ。そして何故かテツ君の傍には降旗君がいた。征ちゃんがこんな事を許すはずがない。あたしが征ちゃんに言おうとする前に、征ちゃんは話し始めた。
「すまない、待たせたね。大輝、涼太、真太郎、敦、そしてテツヤ…また会えて嬉しいよ。こうやって全員揃う事が出来たのは実に感慨深いね。ただ…場違いな人が混じってるね。今僕が話したいのはかつての仲間だけだ。悪いが君は帰ってもらっていいかな?」
「…降旗君!」
きっと降旗君は帰りたいと思っているだろう。でも征ちゃんの威圧的な雰囲気に完全に飲み込まれてしまっている。そのせいか動くどころか声も出ないようだった。降旗君を助けるために動こうとした時、その声は聞こえた。