第5章 帝光中にて
ここでの反応も1年のモノと変わらなかった。確かに赤司君と謎の女のあたしがツーショットで歩いていたら、あたしが部外者なら確かにざわざわすると思う。
赤司君に続いて、教室の中にいるみなさんに軽く会釈をしながら歩いていると、突然赤司君の足が止まった。
「やぁ、真太郎」
赤司君は騒がしい教室なんて気にせず、廊下側に座っている髪が緑色の眼鏡の人に呼び掛けた。
「赤司…なんなのだよ、この騒ぎは。それに今俺は授業中なのだよ。そんなに堂々と話しかけるな」
真太郎と呼ばれた人は赤司君に文句を言いながらも、それで要件はなんなのだよ、ときちんと対応していた。律儀な人だ。
「今は生徒会の仕事をしていてね。真太郎、お前には紹介しておく。鈴城中生徒会長の若槻さんだ」
『あ、初めまして。若槻朱音です』
「初めましてなのだよ。俺は緑間真太郎だ。よろしく」
握手を求められたテーピングに巻かれた手を握ると、彼の手は非常に大きいということと、バスケをしている手だということが分かった。緑間くんに別れを告げると、次に向かって歩いていく。
再び教室の前で止まると、同じように騒がしくなる教室。その中で、赤司君の口から桃井、とだけ発せられると教室の中は静まり返った。…というか赤司君、君は本当に授業中だということが分かっているのかな?という眼で見ていると、
「心配ない。どうせこの様子では授業もままならない。僕はその時間を有効活用しているだけだ」
あ、伝わったみたい。というか有効活用じゃないよね、コレ。先生泣いてるし。再び教室の中が大音量となったのに気付いた時には、桃色の可愛い女の子が目の前にいた。
「どうしたの?赤司君」
「お前に彼女を紹介したくてね」
「えっ!?赤司君の彼女!?」
「そういう意味ではない」
『初めまして、鈴城中生徒会長の若槻朱音です。よろしくお願いします』
「鈴城…若槻さん…分かりました。帝光中バスケ部マネージャーの桃井さつきです。よろしくおねがいしますね」
そのにっこりと笑った桃井さんの笑顔に少しだけ違和感を感じたけど、あまり気に留めないようにした。
そしてやっぱり思った通りだ。赤司君はこれにあやかりバスケ部の仲間を紹介してくれるつもりだ。…と思ってた。