第17章 WC予選での波乱
『テツ君は1人だけチームプレイから外れ独立して動いてる。言わばつまり、テツ君は独断で勝手にパスコースを変えた。いくら花宮でも、いつ来るか味方さえ分からないパスまで読むのは不可能なのよ』
若松「けど!そんなパス、あいつら何で捕れんだよ!?」
「…テキトーだろ。どーせここで黒子がパスするかもとか考えてる程度だ。けど毎日一緒に練習してりゃぁテツの考え方も何となく分かるもんだ。必要なのは理屈じゃねぇ、信頼だ」
『大ちゃん…そうだね。けどこの試合での大誤算がもう1つ。日向先輩の3Pが1本も決まっていない』
テツ君のパス変化によって徐々に差が縮まっているとは言え、まだ攻撃力が足りていない。もう一押しするためにも日向先輩の3Pは必要不可欠だった。そして誠凛のTO。何やら深刻そうな表情のベンチを見ると、てっちゃんはここで交代だろう。いくら何でも限界はもうとっくに来ていたのだから。そしてTOが終了し、コートに戻って来た日向先輩の顔つきが変わった。
若松「しっかし本当に入んねーな、今日の4番は。一番欲しい時に不調とはよ。どう思う桜井?」
桜井「…いつもより肩に力が入ってますね。入れ込みすぎというか。秀徳の緑間君のような天才は別として、繊細なタッチが必要な3Pシュートは基本水物です。どんなに良いシューターでも入らない時はとことん入らない事もあります」
若松「だからそれじゃマズイんじゃ…」
桜井「ただし逆に入りだすと止まらない、特に彼はそーゆータイプです」
『だから大丈夫です。日向先輩は、もういつもの日向先輩に戻りましたから』
きっと優しい日向先輩の事だから、去年のてっちゃんの敵討ちでもしようと思っていたあまり、本来の目的を忘れ肩に力が入っていたのかもしれない。けどてっちゃんの純粋な勝利に対する想いによって、本来の日向先輩の想いを取り戻したんだろう。日向先輩が撃った3Pは肩の力が抜け、綺麗な弧を描いた。
桜井「…パーフェクト、外れるなんてあり得ない!」